狩猟生活と神楽 について
椎葉では神楽に猪や鹿が捕れると神楽宿に奉納する習慣がある。神楽最初の演目である「板起こし」は神楽の準備に用いた俎板と包丁や小刀を用いて行われる神事である。猪鹿の奉納があると、唱教と呼ばれる唱え事のあと、肉を俎板で切り祝子(舞手)一同で食する。尾前では「板起こし」の前にシシマツリと称する儀礼がある、一頭の猪を神前に供え、猟師が呪文を唱えたあと、内臓を取り出し、7切れの肉片を串刺しにする。大河内では、猪面と猟師が登場する「猪舞」と称する神楽がある。猟師は木の杖を鉄砲に見立てて、猪を追いかける様を演じる。向山地区の弓矢を採物とする「森」の舞では、猟師がシシを追いかける様を演じると言われる。東隣りの諸塚村八重の平では1月15日、山の神祭りの前日に「森山」という神楽があり、一人は弓矢、一人は火縄銃を持って舞う。県内の西都市銀鏡や北郷町潮嶽では猪の奉納があり、特に銀鏡では「シシトギリ」と称して、猟師がシシガリをする様を演じる神楽がある。椎葉、及び、宮崎県内の山の神楽は狩猟民俗が豊富に伝えられる全国でも貴重な要素を残している。