焼畑農耕と神楽 について
椎葉神楽は雑穀や芋、蕪など焼畑で栽培される作物を用いる舞が多い。盆に米をのせて散米する神楽は悪魔祓としてよく見られるが、ここでは米の代わりに、稗や粟、大豆、小豆を用いることがある。不土野の「福の種蒔き」では盆の小豆を撒き、村人が競って拾い集める姿が見受けられる。これは翌年の畑に蒔く種とする。向山日添では最後の「朝神楽」で大豆を撒くが、これは本来、稗を撒いていたという。栂尾でも「火の神神楽」でモロブタに大豆を入れて火の神に供えることがある。胡摩山や奥村では「年の神」という舞でトウキビ(とうもろこし)を手に舞ったあと、火の神に供える。仲塔や奥村、胡摩山などでは「稲荷」を舞ったあと、里芋が必ず振る舞われる。里芋は蜂蜜をつけて食される。不土野では「稲荷」を舞っている間に「酎ぼかい」という演目があり、豆腐と蕪の輪切りの串刺しが出される。一晩に、焼畑の作物が様々な形で神楽のなかで用いられる。